――― Marky on the WEB

2002/12/10
ファシリテーターが参加者を信じるということ

去る11月30日〜12月1日に「ミーティング・ファシリテーター入門講座in中京」が開催された。中京圏で環境教育にとりくむ無量小路さん、下村さんといっしょにつくっていった。お二人の強力なネットワークで、中部リサイクル運動市民の会、ホールアース自然学校、グランドワーク東海、環境市民、木文化研究所、レッツチタ、ツリークライミングジャパンなど、実績のある有名な団体からの参加が目立った。また、村づくりや、国際理解に関する活動、野外料理に関する活動などをしている人たちも参加してくれた。開催に尽力してくれたお二人と、生活面などにおいて協力してくださった岐阜大学のメンバーに感謝したいと思う。

ファシリテーター入門講座は、2002年6月に始まり、この回で3回目を数えるが、毎回いろいろな挑戦をしている。今回も、「ゲーム的なアイスブレイクは一切しない」「本来は参加者に見せない進行表(あんちょこ)を最終日に公開する」など一見掟破りにも思える挑戦をしてみたのだが、なんといっても最大の挑戦は「参加者を信じきること」だったと思う。ワークショップをするときに、進行役が参加者と短い時間で関係性をつくり、参加者を信じて時間をつくっていくことの重要性は、頭ではわかっていても、実践はなかなか難しいものだ。

今回は、いつもならレクチャーで僕が話しをする「会議を改善する5つの提案」の内容を、僕が話すまえに、参加者にグループワークで考えて、模造紙にまとめて発表してもらう時間をとった。参加者の事前情報から、たぶん僕がレクチャーするより、参加者自身が考えてその内容に付け加えるカタチでレクチャーしたほうがいいのではないかと判断したからだ。
結果は大当たり! やはり自称「すばらしい参加者」の無量小路さんたちのネットワークだ。どんどん自分たちで大切なことが何なのかをグループごとにうちだしてくれた。

また「ファシリテーション実習」でも、普段なら僕がグループワークのテーマを設定してからワークにはいってもらうのだが、たまたまひとつのグループには「無題」でワークをしてもらった。グループワークには明確な指示とかテーマとかを与えるのが定説になっているが、今回の参加者なら「自分たちで今話し合うべきことが何か」をさっさと設定してやれるだろうとおもったから、おまかせすることにした。案の定、僕が考えるより、いいテーマ設定をはじき出して十分にいい会議をやっていた。この他にも、いきなり参加者からグループの分け方を提案してもらったり、ふりかえりのやり方をいつもとは大きく違うやりかたで参加者にまかせてみたりした。いずれもうまくいったと思う。

ファシリテーターは参加者に信じてもらわないと、なかなかうまく進行できないものだ。「なんであいつが進行しているんだ」とか斜めにみられながら進行するのはとてもつらい。逆にはじめの数分間で「この人になら進行をまかせても大丈夫だろう」と思ってもらえる導入をする必要がある。これはファシリテーターをする人にはとても必要なスキルだと思う。

今回は逆に、ファシリテーターが参加者を信じて進行するということの面白さと大切さを学んだ。参加者に信頼された進行役が、逆に参加者を信じた指示を出したり、ワークをすると、参加者は思った以上の力を発揮してくれたりもするのだ。 これはものすごい発見だった! そのときのダイナミズムと、学びの深さをここで文章であらわすのは困難なくらいだ。ともかくも、岐阜の講座は僕自身が参加者を信じて、参加者も僕を信じて、その場の流れがまるで生き物のようにうねり、必要なものがどんどん産まれていく、というすばらしいワークショップだった。

もちろん、どんな参加者でも信じていいわけじゃない。相手によっては明確な指示やテーマを与えてもらわないと困る段階のこともある。それでも、できるだけ僕は参加者を信じていこうと思った。こちらから「ボールをなげるよ!」といって「いいよ」と返してもらえる参加者には、これからもどんどん信じたうえでのボールを投げていきたいと思う。