僕の活動の原点のひとつに、A SEED JAPANでのリーダーシップトレーニング実行委員会という活動がある。この活動は、環境問題に取り組む青年の活動のリーダーを育てようという目的をもってつくられたものだ。
当時(1995年)、大学2年生だった僕は、学内の環境サークルや、エコ・リーグ(全国青年環境連盟)のプロジェクトに没頭していた。学園祭のゴミを減らしてみたり、大学で環境問題の授業を創設する運動をしていたり、オゾン層保護の活動をしたり、阪神淡路大震災へのボランティア派遣の活動をしていたりした。
92年の地球サミットをきっかけに、全国の青年が環境問題への取り組みを足下から始めていた時期だった。青年には時間がある! が、ノウハウはない。
それゆえに、いくつもの失敗をしてきた。
人がこないシンポジウムをやったこともある。資金調達にこまったこともある。工夫をして新人獲得に成功することもあれば、失敗することもあった。会議をしてもうまくまわらなかったり、活動の目標をさだめるのに半年もかかってしまったこともあった。ビジネスマナーの基本を知らないがために、交渉に失敗したり、企画書の書き方がわからずに提案を受け入れてもらえないこともあった。
しかし、これらのことにはいくつかのコツがある。それさえ飲み込めれば、あとはなんとかなるものだ。なにかしらの方法で、活動のコツをつかむことができないものかなぁと考えていた。
そんなときに、A SEED JAPANという団体で、リーダーシップトレーニング実行委員会という活動があることを知った。僕はすぐに参加し、創設者の羽仁カンタをはじめとする魅力的なメンバーと出会い、A SEED JAPANにのめりこんでいったのだ。
さっそく、その夏には、総勢20名ほどで、渡米をして、アメリカにおけるNGOトレーニングを受講し、いくつかの先駆的なNGOの視察をした。たったの17日間ではあるが、この渡米の衝撃は大きかった。アメリカのNGOトレーニングは強烈に僕の体のなかに入ってきた。トレーナーの身ぶり手ぶりまで、記憶に残っている。日本ではまだまだ脆弱なNGOの活動を強化する必要性や可能性を強く感じたのだ。そしてまた、成熟し、社会の声に応えるNGO活動を目の当たりにした。また、いまの僕が仕事としている「ファシリテーション」という概念もこの渡米で触れたことだ。
そんな渡米の経験を活かして、日本版のNGOトレーニングをつくろうという活動を、帰国後おこなった。そこで完成されたのがSEED TRAININGというトレーニングプログラムだ。アメリカで学んだ「会議の仕方」「戦略の立て方」「課題の選び方」「アクションの起こし方」「メディアの使い方」などのトレーニングプログラムを基本におきながらも、日本のNGO活動の現状にあったトレーニングプログラムをつくっていった。
「はたしてアメリカ仕込みのトレーニングプログラムが日本に受け入れられるのか?」という不安がこころをよぎった。また、自分のような未熟者が他人に対して「何かを教える」というのはいかがなものか、という心配もあった。それでも、僕たちはトレーニングプログラムを日本各地で実施していった。今思えば未熟な点もいくつもあったけれど、当時はほとんどなかったマネジメントトレーニング(団体を上手に運営するコツを伝える研修)の先駆けをになったのは確かな事実だ。
そんなトレーニングの内容を整理した本が「NGO運営の基礎知識」という書籍だ。アルクという出版社から98年に発行し、2刷まで刷られた。が、残念なことに2003年12月をもって、絶版ということになった。冷え混み続ける出版業界で、大して儲からない書籍を抱え込むわけにはいかないものである。
大変残念だけど、そういう苦労の積み重ねがあった「NGO運営の基礎知識」の廃刊が決定した。
「ミーティングの進め方」にはじまり「目標設定の仕方」「戦略の立て方」「イベントの企画・運営」「資金調達」「広報」「会計」「ニュースレターの編集」など、NGOやNPOを運営する上での大切なノウハウを、現場から描いている数少ない本だ。とりわけ、「事務局の日常業務」という章では、レターヘッドのあり方や、電話の取り方にはじまり、細かなノウハウがいくつも書き込まれている。
もし、あなたがNGOやNPO、各種市民活動団体等を運営する立場にあるならば、ぜひこの本を手にとってもらいたいと思います。近くの本屋さんで購入していただくか、在庫がない場合はA SEED JAPANのWEBサイトにてご注文ください(残り数十冊ですが)。
http://www.aseed.org/
※A SEED JAPANでの販売は、完売のため、終了いたしました(2004年5月)
また、すでにご購入いただいた方は、どうもありがとうございました。
将来的には「第二段」をつくれるように考えているので、お楽しみにお待ち下さい