――― Marky on the WEB
青木将幸ファシリテーター事務所

2011/7/10

聴覚障碍者と会議をする時の工夫リスト バージョン1.1 →バージョンアップ版はこちら

作成:青木将幸


◆聴覚障碍者は日本に何万人?

聴覚障害を持っている人は日本に何人いると思いますか?
障害者手帳を持っている人で39万人います。これは1000人いたら、3人は聴覚障害を持っているという数。耳の不自由な高齢者を含め「話すのにやや不便を感じる」という方を含めれば600万人以上もいるようです。
私たちが会議をするときに、こういった方々と同席する可能性は充分にあります。しかし、どういうことに配慮すれば、彼ら・彼女らが参加しやすく、貢献しやすいのかについては、あまり知りませんでした。
ここ最近、聴覚障害を持った方々と出会うきっかけがあったので、ツイッターなどを通じて何人かの方にアドバイスをいただき、工夫リストとして整えてみました。まだまだ、不十分なところもあると思いますので、足りないところは、ぜひご指摘下さい。


◆聴覚障碍者をひとくくりにしない

聴覚に障害があるといってもいろいろです。なかには言語を獲得する以前から聞こえなかった人もいれば、事故や薬の副作用で、中途失聴になった人もいます。
全員が「手話」を使うわけではありません。
主に補聴器を使う人もいます。
人の唇の動きをよく見ることで、発言の内容を断片的に把握する人もいます。
ノートテイクや要約筆記をしてもらうことで、情報をキャッチしやすくなります。要約筆記もいろいろで、手書きの要約筆記もあるし、パソコンやOHPで要約筆記し、プロジェクターに写し出すということもあります。手話や、要約筆記についてはサポートしてもらえる団体や制度もあるようなので、調べてみましょう。
音声会話に不自由しない人=聞こえる人のことを「健聴者」もしくは「聴者」といいます。


◆こんな工夫はどうでしょう?

1,まず、当人に聞く
→当然のことながら、聞こえ具合や、やってもらうと助かる方法は人によって違います。「前あった人はこうだったから多分そうだろう」とひとくくりにせず、当人に聞くのが一番。「どんなサポートがあると、助かるか?」「今回の会議では、こんな風に進めようと思うけれど、どうするともっとよいか?」などを聞いて、適切な方法を選びたいものです。

2,会議の冒頭に確認する
→会議を始めるにあたって、今日、どんな人がここにいるのかを確認します。聴覚障害を持った人との会議に慣れている人もいれば、慣れていない人もいます。どれくらい聞こえて、どういう配慮があるとコミュニケーションしやすいかを参加者全員で共有します。

3,ゆっくり・はっきり話す
→早口で、ばばばーっと話したり、モゴモゴとあいまいな発言だと、補聴器でとらえにくかったり、手話通訳や要約筆記が困難。少し意識して、ゆっくり・はっきり話すようにします。唇の動きを見て発言をくみとっている様子だったら、その人を向いて話すほうが読み取りやすいとのこと。

4,指示語をなるべく減らす
→「あれが、これと近いわけですよ」などと指示語が多いと、話の関連性がわかりにくくなります(とりわけプロジェクターの図解を指さしている時などに多い)。指示語ではなく、具体的に言い表すほうがよいようです。

5,他人の発言に割り込まない
→同時に複数の人が発言してしまうと、会話を追えなくなってしまいます。他人の発言に割り込まないようにご注意を。1人ずつ発言するように。

6,誰が話しているかを明示する
→今、誰が発言しているのかが明らかにしましょう。そのために「発言は挙手をしてからしよう」とか「自分の名前を言ってから意見を言おう」、などのルールを制定するのもあり。マイクや、トーキング・オブジェ(発言する人が手に取る棒や石などの)を使うのは、視覚的にも誰が話しているか追いやすく、同時多発発言を防ぐので、有効。

7,発言を書く
→会議で出ている発言をホワイトボードにどんどん書いてみるのも手です。今、どんな議題を話し合っていて、どんな意見が出て、どんな結論になりつつあるかを可視化するのは、会議参加者全員にとっても意味あること。

8,雑音を減らす
→とくに補聴器を使っている人にとって、雑音はノイズになるようです。ボールペンをかちかちさせたり、資料をパリパリいわせたりしないほうがベター。なかにはイスをひっぱる「ガガガ」という音がつらいという人もいます。古いテニスボールをイスの足にはめて、静かな音環境をつくる工夫もあるようです。冷暖房や換気扇の音がノイズになることもあるようです。聴覚障害を持った人が自由に座り位置を選べるようにしましょう。

9,意思表明カードを使う
→ちょっとした意思表明ができるカードを使う方法もあります。例えば青のカードは「賛成」、赤のカードは「反対」、黄色のカードは「分からない/微妙に悩む」とか。これを全員で出すと、視覚的に皆の意見が共有できます。僕が出会った難聴者の方は、「ゆっくり」「もう一度」などと書いた「うちわ」を活用して、皆に協力を求めていました。

10,間を取る
→要約筆記をするにせよ、手話通訳があるにせよ、リアルタイムに情報が伝わらず、ちょっと遅れます。なので、発言を終えたら、追いつくために、ちょっと間を取るようにします。「これについてどう思いますか?」といった問いかけをしたあとも、すぐに発言を求めるのではなく、少し間があると、考えたり発言しやすくなります。(ただし、発言の文中で止めると、通訳しにくいので言い終えてから間をとったほうがよいようです)。

11,つめこみすぎない
→という意味でも、会議の内議題をあまりつめこみすぎず、時間にゆとりをもっておくことが肝要。これは健聴者同士の会議でも、そうありたいと思うところです。

12,発言をふる
→聴覚障碍者は言いたいことがあっても、タイミングを逃すことが多くあります。シンプルに「○○さん、ここまでのところ、どうですか?」とふるだけでも言いやすくなる。

13,聴覚障害を持っている人がアドバンテージをとれる時間を持つ
→どうしても、健聴者がアドバンテージ(優位性)を持っていて、いつも聴覚障害を持っている人が受け身になって「ついてゆく」「待っていてもらう」感じになりがち。こういう優位性を逆転できるワークや時間があると、皆が活躍できる会議になりそうです。健聴者もいっしょに「聞こえない会議体験」をしてみるという手もあるかもしれません。

14,配付資料にはナンバーとルビを
→配付資料にナンバーを振りましょう。ページ数をふったり、「・」や「○」などで、箇条書きにしているものに(1)、(2)、(3)とあるだけで、ましになるようです。専門用語で読みにくい漢字にはルビをふっておきましょう。

現段階で僕が教わったのは、上記のようなことです。いかがだったでしょうか?
他にもあるよとか、これは違うよ!ということがあれば、ぜひ教えて下さい。よりよいものをつくって、多くの人に使ってもらえたらと思います

連絡先:青木将幸 marky◆aokiworks.net ◆を@に変えて下さい http://www.aokiwoks.net